個人立クリニックから医療法人立クリニックになると、様々な制限や義務が発生します。

医療法人立クリニックを開設すると同時に、個人立クリニックは廃止することになります。
実質は承継なのですが、法的には新設となるのです。

すなわち、理事長はクリニックの事業主ではなくなります。
クリニックの事業主は医療法人になるのです。

この結果から導かれる主な制限・義務は以下のとおりです。

制限

  1. 医療法人設立後、1年間は資産変動を伴う定款変更は認められません。
  2. 医療法人設立後、2年間は基金(医療法人設立時に運転資金として拠出したお金)の返還はできません。2年以上経過している場合でも、返還する基金相当額を代替基金として積み立てる必要があります。
  3. 株式会社と根本的に違うので、利益の分配(配当)はできません。事実上の配当行為と思われる行為も禁止されます。
    例えば、役員および第三者への金銭貸付不当な価格での取引     など
  4. 特別の利益供与は禁止されます。
    例えば、不必要な住居の提供
    個人として使用する自動車の提供  など
  5. 医療法人と取引関係にある営利法人(いわゆるMS法人)の関係者は、医療法人の理事長に就任できません。

義務

  1. 重要事項は社員総会で決定しなくてはならなくなります。
    重要事項とは、例えば、クリニックの運営方針を決める時、役員変更、予算・決算の承認などです。
  2. 定款に基づいた法人運営をしなければならなくなります。
  3. 都道府県から指導監督を受けることになります。例えば、定款変更をするときは、都道府県の認可が必要になります。
  4. 理事長が引退しても、医療法人自体は消滅しません。
    よって、後継者の決定、育成をする必要があり、常に安定した運営を考えなければならなくなります。
  5. 毎年、以下の手続きが必要になります。
    社員総会、理事会の運営予算、決算総会の実施
    監事による監査の実施
    各種申請、届出、登記の履行
    2年ごとの役員改選の手続   など
  6. 都道府県に届出が義務付けられている文書は、一般の方に公開されることになります。
    事業報告書
    財産目録
    貸借対照表
    損益計算書
    監事の監査報告書
    定款        など

以上のように、医療法人立クリニックになったら、多くの制限・義務が発生するので、熟慮のうえ、医療法人化する必要があります。