個人立クリニックから医療法人立クリニックになると、様々な制限や義務が発生します。
医療法人立クリニックを開設すると同時に、個人立クリニックは廃止することになります。
実質は承継なのですが、法的には新設となるのです。
すなわち、理事長はクリニックの事業主ではなくなります。
クリニックの事業主は医療法人になるのです。
この結果から導かれる主な制限・義務は以下のとおりです。
制限
- 医療法人設立後、1年間は資産変動を伴う定款変更は認められません。
- 医療法人設立後、2年間は基金(医療法人設立時に運転資金として拠出したお金)の返還はできません。2年以上経過している場合でも、返還する基金相当額を代替基金として積み立てる必要があります。
- 株式会社と根本的に違うので、利益の分配(配当)はできません。事実上の配当行為と思われる行為も禁止されます。
例えば、役員および第三者への金銭貸付不当な価格での取引 など - 特別の利益供与は禁止されます。
例えば、不必要な住居の提供
個人として使用する自動車の提供 など - 医療法人と取引関係にある営利法人(いわゆるMS法人)の関係者は、医療法人の理事長に就任できません。
義務
- 重要事項は社員総会で決定しなくてはならなくなります。
重要事項とは、例えば、クリニックの運営方針を決める時、役員変更、予算・決算の承認などです。 - 定款に基づいた法人運営をしなければならなくなります。
- 都道府県から指導監督を受けることになります。例えば、定款変更をするときは、都道府県の認可が必要になります。
- 理事長が引退しても、医療法人自体は消滅しません。
よって、後継者の決定、育成をする必要があり、常に安定した運営を考えなければならなくなります。 - 毎年、以下の手続きが必要になります。
社員総会、理事会の運営予算、決算総会の実施
監事による監査の実施
各種申請、届出、登記の履行
2年ごとの役員改選の手続 など - 都道府県に届出が義務付けられている文書は、一般の方に公開されることになります。
事業報告書
財産目録
貸借対照表
損益計算書
監事の監査報告書
定款 など
以上のように、医療法人立クリニックになったら、多くの制限・義務が発生するので、熟慮のうえ、医療法人化する必要があります。